「to you」2023年10月号
令和5(2023)年9月25日(月)発行
令和5(2023)年9月25日(月)発行
声優を夢見て東京の専門学校に通っていた日向ひまわりさん。二代目神田山陽の講談を見たことをきっかけに、講談の世界に飛び込みました。以来29年、東京を拠点に活躍するひまわりさんに高座への思いを伺いました。
普段は主に都内の寄席で高座を務めています。寄席では落語や漫談など次々に芸人が登場するので、講談もいろんな話芸の中の一つとしてお客様に楽しんでいただいています。いつも舞台袖から客席の雰囲気や年齢層を見て、読むネタを決めます。落語と同様に、まくらを話しながら今日はこのネタにしようと、高座で決めることもあります。同じネタでもお客様の受け方をみて、微妙にテンポや間を臨機応変に変えながら高座を務めています。ですから講談は一人で語るものではなく、お客様と一緒に作る一回限りの話芸だと感じます。昨日ウケたからといって、同じようにやっても同じ結果にはならない怖さがあります。
ありがたいことに、寄席で講談を聞いた方が、自分の地元の人達にも生の講談を聞いてほしいと、公演の機会を設けてくださることがあります。演じる場所は文化センターや飲食店などさまざまです。地方の高座で初めて講談を聞いた方が、東京の寄席に足を運んでくださることもあります。初めて聞く講談がつまらなかったら、二度と講談に興味を持ってもらえないので、寄席でも地方公演でも、毎回、高座はオーディションに臨むような気持ちです。
私は二代目神田山陽との出会いがあり、講談の世界に飛び込みました。山陽の他界後も新しい師匠との縁やお客様との縁があって講談を続けてこられたので、つくづく人の縁のありがたさを感じます。講談は百人いたら百人の受け止め方があります。みんなが同じところで同じように共感するとは限りません。広島の独演会では、何か一つの場面、一つの言葉だけでもいいから、お客様の心に残せるように頑張ります。
著:西村文(中国新聞社)、廣谷明人、二口とみゑ
定価:1,980円(税込)
出版社:ガリバープロダクツ
発売中
私が「明子さんのピアノ」と出会ったのは2013年のことです。原爆の日に神崎小学校(広島市中区)の児童を前にこのピアノを初めて弾きました。話しかけてくるような、温かい音色に心を奪われました。
2020年には、明子さんをモデルにしたピアノ協奏曲『Akiko’s Piano』(藤倉大作曲)を広島交響楽団との協演で世界初演しました。
河本明子さんは戦前にアメリカで生まれ、少女時代を広島で過ごし、19歳のとき原爆で亡くなりました。セルゲイ・パルチコフさんはロシア革命を機に日本に亡命し、広島で原爆に遭いました。2人の遺品の楽器は今、広島市にあります。
私の母方の祖父母は被爆者で、明子さんと同世代です。もし2人が原爆で亡くなっていたら…。私も、今年2歳になった娘も生まれていませんでした。
残された二つの楽器、この本にある2人の生涯に思いを馳せることで、「私たちにできることは…?」と考えていただけたらと願います。
広島市安佐南区出身。2010年、スイス・ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門で日本人初優勝。ピアニストとして活躍するほか、2020年から東京藝術大学講師を務める。東京都在住。
大型地震に備えよう ―減災・防災意識向上のために―
文・写真: to you市民パブリシスト 梶川芳文
江波山気象館で企画展「地震と津波のサイエンス」が開催された。平素私たちは「健康で平和でありさえすれば良い」と毎日暮らしているが、発生が想定されている南海トラフ地震(想定最大震度7)には漠然とした不安を抱えている。
この度の企画展にはその「震度7のゆれ」を体験できるシミュレータがある。椅子にシートベルトを装着して座ると、地震を再現した椅子の動きに連動して前面のスクリーンに屋内の家具が転倒する様子が映し出される装置だ。南海トラフ巨大地震(観測地点:高知市・震度7)で90秒の再現体験をした小学生は「頭がくらくらする」と真顔で話してくれた。順番待ちの男性は「南海トラフの事前体験に来ました」と言う。このシミュレータで体験した人はいずれも揺れの体験が記憶に刻まれたはずだ。
記憶といえば、広島市での大きな地震は22年前の芸予地震(震度5強)だ。橋上の揺れの大きさに座り込んだ弟、本棚を支え続けた妻、机の下でやり過ごした子どもたち、私の近親者はそれぞれに当時の記憶を鮮明に語る。
次の南海トラフ地震は広島市で最大6弱と想定されている。これは「固定している家具の大半が移動し、倒れるものもある。立っていることが困難である」とパネルの解説にあった。実体験であれシミュレータであれ、揺れの経験はいざというときに落ち着いて対応できることに活かされるように思う。
全長8mスケール1/100の大型津波発生装置の展示もある。迫ってくる津波を観察する装置の中に親子が交互に入って実物大なら12mに相当する仮想津波に向き合っていた。江波山気象館の中越主任学芸員は「大きな津波が危険なことはみなさんよくご存知ですが、私たちが考えている以上に水の力は大きく、わずか数10㎝の津波でも流れに巻き込まれる恐れがあり危険なんですよ。」と語られた。
柱と柱の間に筋交い(※)が施された建物と柱だけの建物を並べ台座を動かし、揺れの違いをみる模型がある。「うちの学校は筋交いを施した耐震工事が済んでいます」と筋交いが耐震性を高める効果を模型で確認して安心した様子の親御さんの声もあった。
(※)筋交い…建築物や足場の構造を補強するために柱と柱の間に斜めに入れる部材
今年は関東大震災から100年の節目でもある。予測が困難な地震ではあるが、過去の数多の地震を乗り越えた日本には教訓があり、この「忘れてはならない教訓」を今に活かし後世に伝えていくのが私たちの責任であろう。
この企画展からは、正しい知見を得て大地震に真正面から向き合う姿勢が問われているような気がする。早速、地震に備えてハザードマップを確認しておこう。
※「to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3ヵ月毎に掲載します。
リコーダーを愛し、アンサンブルを楽しむ人たちのグループです。創立42年と歴史は古く、現在は立ち上げ時から所属するメンバーを含め、5年~40数年のリコーダー経験を持つ11名で活動。毎週土曜の午後、二葉公民館で練習しています。10月には記念すべき20回目の定期演奏会が開催されます。テーマは温故知新。ソプラニーノからコントラバスまで7種類のリコーダーの合奏のほか、楽しい打楽器やギターが入る曲などを披露します。
頼山陽史跡資料館へ「現代刀の愉しみ」を見に行きました。刀匠の方々の名品は、その美意識にゾクゾクっとするものがありました。この資料館では頼山陽のお好みとして復刻した筆を販売されています。とても書きやすいので、一段とお習字が上手になることを受けあいです。(安佐北区 一刀流さん)
☆最近は美術品として外国人や、ゲームを通じて若い人にもファンが増えているという刀の世界。その特徴や歴史を知るとハマりそうな魅力がありますね。復刻した筆、一度使ってみたいです。(編)
夏休み、広島工業大学で開催された小学生向けの「ものづくり」イベントに参加。事前に15種類のプログラムの中から希望のものを選んで申し込む。息子はロボットカー作りに挑戦。教室に着くと部品や工具が並びフルカラー印刷の資料も用意してあった。それを見ながら分からない所は優しいお兄さんに手伝ってもらい素敵な作品を完成させた。「面白い」と真剣に取り組んでいた息子。早くも来年は時計が作りたいと意気込んでいる。(佐伯区 sinceさん)
☆試行錯誤しながら作ったものが動いた瞬間や完成時の達成感は何ものにも代えがたい喜びがありますよね。今回の体験がお子さんのいろんな興味を引き出しそうですね。(編)
毎年夏に、音楽で平和の発信を願う若手演奏家による「ピース・コンサート in ヒロシマ」が開催されています。今年は6回目になり、広島市外では初めてとなる呉公演を鑑賞しました。木村紗綾さんのヴァイオリンによりドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲イ短調が演奏されました。美しい音色にうっとりしました。 (呉市 YUKOさん)
☆木村紗綾さんをはじめ、演奏者の心意気と技術力が素晴らしく未来に向けた平和への思いが伝わるコンサートでしたね。広島公演で演奏された中村暢之さんの作品「bridge」はぜひCD化して多くの人に聴いてほしいです。(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶日向ひまわり独演会(2組4名様)
❷八丁座・サロンシネマ共通鑑賞券(11月末日まで有効/3組6名様)
❸映画「ドリーム・ホース」(3組6名様)
❹「おいしいボタニカル・アート」展(5組10名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/令和5年(2023)年10月10日(火)必着 ※当日消印有効
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246