「to you」2025年1月号
令和6(2024)年12月25日(水)発行
令和6(2024)年12月25日(水)発行
千田 嘉博さん( せんだ・よしひろ)
名古屋市立大学教授 城郭考古学者
1963 年愛知県生まれ。1986 年名古屋市見晴台考古資料館学芸員。1990年から国立歴史民俗博物館 考古研究部 助手。1995年に文部省在外研究員としてドイツ、イギリスに留学。2000年5 月「織豊系城郭の形成」の研究で大阪大学より博士(文学)学位取得。2001 年国立歴史民俗博物館 考古研究部 助教授。2005 年奈良大学 文学部 文化財学科 准教授、2009 年奈良大学 文化財学科 教授。2012 年8 月~2013 年8 月ドイツ・テュービンゲン大学およびドイツ・フランクフルト大学客員教授。2014年~2016年奈良大学長。2015年に第28回濱田青陵賞受賞。2016 年NHK 大河ドラマ『真田丸』の真田丸城郭考証。2023 年9 月から名古屋市立大学 高等教育院 教授・奈良大学 特別教授。名古屋城跡の石垣部会委員、熊本城跡の文化財修復委員、佐賀県肥前名護屋城跡並びに陣跡ほか国内各地で城跡調査、整備・活用の委員を務めている。
また、『歴史秘話ヒストリア』、『趣味どきっ!・お城へ行こう!』はじめ多くのテレビ番組に出演。わかりやすい解説と最新の情報紹介で人気。著書に「歴史を読み解く城歩き」「城郭考古学の冒険」など。歴史を解明するだけでなく、市民とともにいかに城を保存・活用していくかを考察することが長年の研究テーマ。
親しみやすい人柄と深い知識をわかりやすく説く解説で人気の城郭研究家、千田先生。広島での講演を前に城の楽しみ方について伺いました。
■“好き”が研究の原点
少年の時から城に熱中して、大きくなって城の研究者になりました。だから、今でも研究を続ける一番深いところに「好き」があります。好きなことを仕事にしたことで、遊びと仕事の境目がなくなって、遊ぶように仕事をしています。好きな城を訪ね、考え語ることが仕事なので、そのすべてにワクワクしています。
これから人生を切り開いていく若い人には、迷わずに好きなことを深める勇気をもつよう勧めています。一度だけの人生です。いやいや働いて、休日だけが自分を取り戻せる時間と感じて日々を過ごすには、人生は長すぎます。まずは好きを見つけて熱中して突き進む。同時に、好きを活かして生きるには何をすべきかを考える。情熱と冷静の間で、若者が自分の好きと共に生きる道を、見つけてほしいと願います。
■城を自由に楽しもう
“観光地”として城を訪ね、自由に楽しむのもいいと思います。食べ歩きやお土産を目的に楽しむのも自由です。一人で、あるいは友人や家族と城を訪ねた体験そのものが、かけがえのない輝く記憶になります。だから観光として城を歩く着目ポイントは、いかに楽しむかです。そうした時に「石垣が」とか「櫓やぐらが」とこだわっても、楽しくありません。無粋なだけですから、「城に詳しいぞ風」を吹かすのはやめましょう。
一方で、城から歴史を体感し、歴史を読み取ろうとする城歩きなら、時間をかけて土塁や石垣・堀、櫓や門・天守を観察しましょう。たとえば同じように見える石垣も、実はさまざまな違いがあり、多くの発見があります。違いがわかると楽しいですよ!
私はすべての城が好きなので、ベスト3もワースト3もありません。大きな城も、痕跡を地表にかすかに残す小さな城も、それぞれがオンリーワンで、地域の歴史を物語るベストな城です。ランキングして価値の序列化をする意識や風潮は、間違っていると思います。さまざまな城の多様性を尊重する歴史意識をもって城を楽しんでほしいです。
「人形劇サークルえぷろん」おすすめの一冊
『めっきらもっきらどおんどん』
作:長谷川摂子
画:ふりやなな
出版社:福音館書店
¥1,100(税込)
販売中
わくわくドキドキ!が飛び出す出会いと遊びの絵本
子どもたちと楽しむ絵本には、鬼や妖怪、そして友だちのように心や言葉を持つ人形や動物たちが登場します。大人には見えなくても子どもたちにはそれが本当に見えているのかもしれません。そんな絵本の中でも私たちのおすすめがこの一冊です。人形劇にして保育園や児童館などで公演しています。
主人公の男の子が不思議な神社で奇妙な妖怪と出会います。夢か現実か、個性豊かな面々との出会い。わくわくドキドキが溢れる楽しい遊び。ふろしき遊び、お宝交換、空飛ぶ丸太……。
ふりやななさんの画は、今にも飛び出してきそうな迫力で、どの方向から覗き込んでも躍動感があり引き込まれます。絵本の外に「うわ〜っ!」と飛び出してくる声が聞こえてきそうです。
妖怪たちに大好きな遊びやお宝があるように、一人ひとりにも個性があり、お気に入りの遊びや大切な宝ものがあります。それをステキね、楽しいねって心から共感して一緒に楽しむ大人でいたいものです。あなたの大好きな遊びは何ですか?
広島のシンボルを読み解く
―たてフェス(ひろしまたてものがたりフェスタ)に参加して―
文・写真:to you 市民パブリシスト 梶川芳文
原爆ドームや平和記念資料館など、いつも見慣れた広島のシンボルも時代背景や建築文化的なアプローチで見聞すると、理解は深まるものだ。今年で10回目となる「たてフェス」は広島の優れた建物を解説付きで見学できるイベントで、普段は入れない箇所も特別に公開されている。今回は市内33か所のプログラムの中から「原爆ドームと平和記念公園」(90分)に参加した。
プログラムの前半は、平和記念公園が見渡せる商工会議所9Fでの座学。平和記念公園のある中島町の歴史から始まった。江戸時代の物流は海運が主流で、広島は瀬戸内海から遡上する海船と太田川を下ってくる河船が、元安橋・本川橋で荷揚げや荷積みの拠点となり西国街道にも交わって、両橋のある中島町は昭和初期まで商業の中心地だった。大正初期に建設された産業奨励館(原爆ドーム)は、立地条件に恵まれたこの地で往時のシンボル的な建物であったであろう。
後半は平和記念公園を散策しながらの実地解説。「Q:原爆ドームの正面玄関はどこでしょうか? はて?」「A:日本の市街地建築は道路側に顔を向けて建てられているが、ドームはヨ-ロッパ的な発想から川の方角を向いて川と調和している」。「Q:円く見えるドームのてっぺんは楕円形です。はて?」「A:ドームは曲線や楕円が多く用いられるバロック様式で建てられている。崩れた窓越しに豪華な装飾の柱も見える。外はレンガ造りで中は木造のドームは、RC(鉄筋コンクリート)造りのようには爆風に耐えられなかった」。「Q:平和記念資料館を囲う幅30㎝のこの金属プレートは何でしょう? はて?」「A:地震対策で資料館の地下に免震装置を取り付ける工事が2019年に完工した。これは地震時に可動する免震プレートである」。
資料館1Fのピロティ(空間)の先には、直線上に慰霊碑があり、ハニワ型慰霊碑の空間からは原爆ドームが直視できる。この丹下健三氏設計の平和記念公園景観軸は、慰霊の場に相応しい配慮がある。
30名の参加者の中にメモを取る人を多く見かけた。参加者にはリピーターも多く「百聞は一見に如かず、ですね」と次回に期待を寄せる。このイベントは、毎年11月に開催される。
「 to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3ヵ月ごとに掲載します。
シアターレトロマーケット=演劇=
安佐南区を拠点に活動する20代〜50代の7人からなる演劇集団。「演劇をより身近なものに」をコンセプトに、演劇を通じた地域活性が目標。主な活動は、演劇、映像演出、舞台スタッフなどの講座開催と年に一度の本公演の上演。近年は、プロジェクションマッピングと演劇を融合させた舞台に取り組んでいます。
◆演劇×プロジェクションマッピング SINGLES 2018-2025
コロナ禍での無観客映像企画『D.E.M.O』から現在までのオムニバス短編作品を厳選した舞台。日を変え2会場で上演します。
●1月18日(土)、1月19日(日)
マエダハウジング安佐南区民0文化センター ホール
●1月26日(日)
安芸区民文化センター スタジオ
●広島プロミシングコンサート
to you12月号のチケットプレゼントで当選した広島プロミシングコンサートに行きました。若い4人の演奏家たちの熱のこもった演奏はもちろんのこと、広響の演奏も素晴らしく、夢のような時間を過ごすことができました。元気をいっぱいもらったのでまた来年も頑張れそうです。貴重な機会をありがとうございました。(安佐南区 きょろちゃんさん)
☆ 活力ある若い演奏家と、風格を感じる広響との息の合った演奏が見事でしたね。4人の演奏者は今後活躍が期待されるので、「to you」ではもちろん他媒体でも要チェックですね。(編)
●映画祭を支えた3 日間
11 月22日~24 日に開催された広島国際映画祭に3 日間ボランティアスタッフとして参加。チケットの販売やもぎり、会場案内をしたり、交代で映画を見たりして楽しかったです。去年も参加して2 回目でしたが、顔馴染みの方もいて話もでき、最終日は別れが辛かったですが、楽しい3日間でした。 (西区 りんごちゃんさん)
☆ スタッフお疲れ様でした。華やかな表舞台とは違って裏方は大変ですが、みんなで一緒に創り上げる喜びややりがいは他には代えがたいですよね。to you でも市民記者のボランティアを募集中です(詳細→ P14)。(編)
●基町の中央図書館への想い
私は、本が好きだ。先日、中央図書館企画展「図書館と基町のこれまでとこれから」を見学した。私の青春時代にこの図書館が完成した。多くの本の魅力を教えてくれた。そして、書店人として、働くきっかけとなった。とても、感謝している。基町の中央図書館を忘れることはないだろう。(中区 中区のかっちゃんさん)
☆ 中区のかっちゃんさんの本好きのきっかけ作りをした中央図書館。前身の浅野図書館から引き継いで50年もの月日が経ったとは感慨深いですね。多くの思い出もそのまま引き継ぎ、新しい図書館として生まれ変われたらと思います。(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶音楽の花束〈冬〉~広響名曲コンサート鑑賞券(2組4名様)
❷万作の会狂言会鑑賞券(2組4名様)
❸「美術ひろしま」本(3名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/1月10日(金)※当日消印有効
お年玉の 記入に始まる家計簿は 六十五冊目書き継がんかな
光原 桂子(第33号一般の部・短歌部門)
冬が好き 服の種類が 多いから
片部 咲希(第33号ジュニアの部・中学生・俳句部門
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246