「to you」2024年10月号
令和6(2024)年9月25日(水)発行
令和6(2024)年9月25日(水)発行
横山 英史さん(よこやま・ひでふみ)
比婆荒神神楽社副社長
庄原市東城町生まれ。代々、比婆荒神神楽社※1 社長を務める家に生まれ、幼い頃から神楽と関わりながら育つ。神楽技術の向上に邁進した青年時代を経て、近年は先祖が暮らしの中でどのように神楽を継承してきたのか、地域の歴史や神話の解釈など神楽の文化的背景の研究にも注力。好きな言葉は「芸は身を助ける」。父、横山邦和氏は比婆荒神神楽社社長。
比婆荒神神楽(国指定重要無形民俗文化財)
本山三宝荒神(もとやまさんぽうこうじん)に奉納する祖霊信仰※2 の神楽。古来の様式を残しており全国的にも貴重。1979年(昭和54 年)広島県内の神楽で唯一国の重要無形民俗文化財に指定された。毎年行う2 日1 晩の小神楽と式年※3 で行う大神楽がある。こども神楽塾、女組などの普及活動にも熱心に取り組む。いずれもメンバー募集中。
※1:比婆荒神神楽社:比婆荒神神楽を保存・継承を目的に、現在東城町内の8人で構成。
※2:祖霊信仰:亡くなった人の魂を神楽でおまつりし、死後も神様、精霊として祀る。
※3:式年:7年・9年・13年・17年・33年毎に行われ、地域で開催周期は異なる。
●比婆荒神神楽 KAGURA Festival
時/9月29 日(日)10:00~16:10
会/庄原市東城文化ホール・東城自治振興センター
料/入場無料
問/みるきくふれる比婆荒神神楽実行委員会
TEL.08477-2-0487
●奴可神社 秋の例祭
時/11 月16 日(土)19:00~
会/奴可神社(庄原市東城町小奴可1195)
料/入場無料
問/奴可神社 TEL.08477-3-2007
地域の荒神様に奉納する昔ながらの神楽文化を堅守する比婆荒神神楽。11月の『第三回平和の舞≪神楽の学校2024≫』への出演を前に、比婆荒神神楽社の横山英史さんにお話しを伺いました。
私は幼い頃から40年近くを比婆荒神神楽と共に歩んできました。初めのうちは上手くなりたい一心でしたが、大人になると自然と神楽が何のためにあるのか考えるようになりました。人は誰しも良い面、悪い面の両方があり、そんな人間同士がずっと一緒にいると当然諍(いさか)いも起こります。あくまでも私見ですが、奉納神楽は人間社会の争い事を減らすためにとてもいい仕組みだと思います。決まった間隔で必ず開催しなければいけない強制力。関わる全ての人が同じ釜の飯を喰い、大変な労力を共に責任をもってやりきる達成感。定期的にこれらを経験することで、日ごろのわだかまりが一旦リセットできていたのかもしれません。また、神楽の中で悪として登場する鬼は、退治されると必ず神として祭られていて、単純な勧善懲悪物語にはなっていない。こういうところも、私が神楽には人が平和に暮らすヒントがあると思う所以(ゆえん)です。
私たちの奉納神楽は時期が来たら行うイベントではなく、神事です。準備に始まり所作、演目、衣装…全てに意味があり、それを代々口伝で継承してきました。文字や映像で記録に残そうと思えば残せるものを、敢えて口伝にしてきたことにも意味があると思います。例えば文字にすると、記されたこと全てを単なる決まり事として捉(とら)えてしまい、想像力を働かせて神楽から学ぶことを疎(おろそ)かにしてしまうのではないでしょうか。私自身を振り返ってみても、諸先輩方のふるまいや表情から人として大切なものを教えられましたし、舞い続けることで健康な体をいただいたと感じます。全国的に先祖代々受け継いできた伝統文化が急速に失われている現代で、古来の文化を守っていくには苦労もありますが、守り通したいと思います。
総監督 伴谷晃二 第三回平和の舞<神楽の学校2024>はこちら
『白鯨』
構成:梶原一騎
漫画:影丸譲也
出版社:グループ・ゼロ
電子書籍販売中
アメリカ文学を代表する海洋冒険小説『白鯨』のまんが版です。小説は1851年に発表され、現在まで何度も映画化されています。こちらのまんが版は、構成は梶原一騎先生が、まんがは『空手バカ一代』の影丸譲也先生が手がけました。影丸譲也先生と言えば、私と夫・迫田良明(水穂輝)が新婚時代から優しくしてもらったのも、良い思い出です。
あらすじは、伝説の白いクジラに足を喰われた船長が復讐に燃える…という内容。小説や映画版には、大人が見ても辛い描写が現れます。しかし、こちらはさすが少年まんが! ドキドキの冒険と友情物語が展開します。
読んで感じるのは、昔のまんがの良さです。昔のまんがには、豊かな日本語表現が見られます。そして過激なシーンでも、そうは見せない品が漂っています。
まんがでも映画でも、今や色んな作品がリメイクされています。たまには昔の名作の方にも目を向けてみませんか? きっと普遍的な良さを楽しめますよ。
レクイエム「碑(いしぶみ)」に込める思い―観音高校OB 合唱団祈念コンサート
文・写真:to you 市民パブリシスト 梶川芳文
被爆79年、今年の広島平和宣言の中で松井市長は「市民社会が起こすべき行動として音楽などの交流を通して“平和文化”を共有できる世界を創っていきましょう」と表明された。ここに紹介するレクイエム「碑」を歌う、観音高校OB合唱団の取り組みもその市民運動の一つであろう。
レクイエム「碑」は観音高校の前身である広島二中の1年生が、被爆し息絶えていく様子を楽しかった学校生活の思い出を織り交ぜながら歌う鎮魂歌だ。爆心地から600mの本川の土手で建物疎開作業に従事していた1年生約321人のほとんどは即死だった。しかし即死を逃れた数少ない生徒がいて、彼らが生きた短い命の日々を聞き取り描いた本「いしぶみ」(ポプラ社)が鎮魂歌に写し出されている。
「いしぶみ」は、作家の曽野綾子氏が2016年オバマ大統領の広島訪問時に、新聞のエッセイで「謝罪は求めず事実のみ伝えよ」「大統領に贈るものはたった1冊の本だけだ」と「いしぶみ」に言及され、英訳本「ISHIBUMI」(ポプラ社)が急遽刊行されたと言うエピソードもある。
私はこの碑コンサートに毎年足を運んでいるが、初めてコンサートに来た人が終章で涙ぐむ姿を何度も見てきた。そこで合唱団が練習する観音高校同窓会館を訪ねて、団員の皆さんに歌に取り組む気持ちやモチベーションを聞いてみた。「合唱に参加した当初は、親の被爆体験と同じ先人の被爆の歌と捉えていたが、今は全滅した1年生は春に小学校を卒業したばかりの幼い子供たちだとの思いが胸に迫り、子らの母親になった気持ちで歌っています」「自分が亡くなった1年生の立場だったらと、心に思いながら歌っています」「特に、若い人にこの事実を伝えたい気持ちです」。現在、遠方からの団員も含めて50名あまりの混成合唱団は、60歳代が主力。入団条件を緩和するなどして継続に努力している。
原爆のはかり知れない破壊力と放射能は、被爆者しかわからない。ところが被爆者は思い返すのも嫌だと口を閉ざす人が多い。合唱団の「君たちの死を決して無駄にしない」との祈りの歌は、貴重な被爆証言として歌い継がれるよう期待して見守りたい。今年のレクイエム「碑」コンサートは、10月13日(日)14:00から県民文化センターで開催される。
「 to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3ヵ月ごとに掲載します。
女声合唱団 のはら=合唱=
2019年12月、三宅悠太氏作曲「のはらうた1」を歌いたい7人が集まり結成した女声コーラスグループ。現在までに「ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト㏌ひろしま」で3度の優秀賞、「中国合唱コンクール」で2度の銀賞受賞。2023年には「おかあさんコーラス全国大会」に初出場し、ひまわり賞(優秀賞)に輝きました。11月3日には念願の「のはらうた1」の全9曲を演奏するコンサートの開催が決定。作曲者、三宅氏を客演指揮に迎え、創作への思いやピアノ伴奏の一音一音に及ぶ解釈を学びながら、推進力のある音の流れ、躍動感あふれる響きを目指して日々練習に取り組んでいます。
◆練習/第1・第3水曜18:00~ 市内公民館など(見学OK・要問合せ)
◆お問い合わせ/小林 TEL.090-7502-1931 ✉nobi66believe@yahoo.co.jp
「女声合唱団のはら 第1回定期演奏会」はこちら
広島県立美術館で開催している「金曜ロードショーとジブリ展」に行きました。写真撮影スポットなどあり、大人も子どもも楽しめる展覧会でした。映画そのままの世界観でアニメの世界を堪能しました。(東広島市 ちぇるしーさん)
☆ ジブリの各映画が公開された年のニュースや流行りが並べてあり、懐かしい記憶が蘇りました。王蟲(オーム)の世界を表現したコーナーがあるなど、夏の思い出作りにピッタリの展覧会でしたね。(編)
8/11に広島市立中央図書館で開催された「被爆体験者の証言を聞く会」に参加しました。証言されたのは切明千枝子さんで高等女学校4年生(現在でいえば高校2年生)の時に被爆された方です。当時の軍都広島の状況や、ご自身や高等女学校下級生の被爆の状況を約2時間にわたりお話いただきました。以前から、被爆者の方のお話を直接伺うことができればと思っていましたが、今回、貴重なお話をお聞きすることができ、改めて日常や平和の大切さを感じました。このような機会があればまた参加したいと思います。(呉市 沖原和雄さん)
☆ 貴重な機会でしたね。今月号の「to you市民パブリシストによるバックステージレポート」(P14)でも被爆証言を継承するコンサートを取り上げています。来年は被爆80年。若い世代に平和の願いをつなげていきたいですね。(編)
毎月、子どもとお出かけする時の参考にさせていただいています。子どもは歴史が大好きで、今は古墳時代にはまっています。想像以上に全国のいろいろな場所に古墳があり、大変驚いています。また、自分たちだけでどこにどのような古墳があるのか調べるにも限界があり、「もぐりんと歴史探検」のコーナーが大変参考になっています。毎月、連載があれば嬉しいです。(中区 もつさん)
☆ご活用いただきありがとうございます! 古墳って一見地味ですが、想像力を働かせてここに当時の人々の社会や生活があったんだと思うと見え方が変わって興味深いですよね。毎月連載、もぐりんに伝えてみます(笑)。(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶『音のマリアージュ』招待券(1組2名様)
❷『近代日本画の真髄 児玉希望』鑑賞券(5組10名様)
❸本誌P3の挿絵含む『甲斐さゆみ先生&水穂輝先生の原画4点』(1名様)
❹『講談に親しむパート4』(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/10月10日(木)※当日消印有効
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246