「to you」2024年5月号
令和6(2024)年4月25日(木)発行
令和6(2024)年4月25日(木)発行
手嶋 勇気さん( てじま・ゆうき)
画家
1989 年、北海道生まれ。2014 年、広島市立大学大学院芸術学研究科修了。写実絵画の技法研究と制作を経て、即興的でドローイングのような絵画を制作する。現在は土地の歴史的な文脈や文化的な文脈に自身が接続される試みとして「風景」を主な題材として描く。主な個展に「ひろしまスケッチ vol.3」(ヱビデンギャラリー[広島]、2022)、「ひろしまスケッチ vol.2」(EUREKA[ 福岡]、2022)、「ひろしまスケッチ」(gallery G [ 広島]、2020)など。主なグループ展に「VOCA 展2022」(上野の森美術館 [東京]、2022)、「シェル美術賞展2020」(国立新美術館 [東京]、2020)など。
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大学で広島に来て、卒業後も広島を拠点に制作を続けているうちに、戦前・戦後に広島で活動していた画家たちに興味を持つようになりました。広島の画家は、凄惨な体験や反戦・平和を描くかたわら、たくさんの街並みのスケッチを残しています。彼らがどうして広島の風景を描くことに真剣になっていたのか、気になっていました。
特に親族のご好意で故大木茂※1さんのアトリエを訪問し、そこで大量のスケッチを拝見したことはとても衝撃的でした。私も広島の風景をスケッチするという行為を模してなにかできないかと考え始め、スマートフォンのドローイングアプリでスケッチをすることを思いつきました。これは広島の画家たちが描いてきた風景を、現代の方法を用いて自分なりに描きなおしていく試みです。
「ひろしまスケッチ vol.3」の展示では、会場のヱビデンギャラリーがある平和大通りの場所性や、大きなショーウィンドウのような特殊な展示室をどう活かすかが課題でした。現代美術館の学芸員さんと打ち合わせを重ねる中で、平和大通りの木々をイメージした図の中に野外彫刻の《ラ・パンセ》※2を繰り返し登場させるプランに決まりました。
実際に展示してみるとギャラリーの大きなガラスに映った平和大通りの木々と、自分が描いた風景が重なって、実際の風景と絵がオーバーラップして見えるような展示になって嬉しかったです。設営を担当していただいた施工業者の技術も素晴らしく、細かな要望にも応えていただき綺麗にかたちにすることができました。設営中、たまたま通りがかった小さな子供が楽しそうに指をさしながら作品を見てくれ、大きな作品をつくるのは大変でしたが、やって良かったと思いました。
※1 大木茂(1899年~1979年):戦前から広島の画壇で活躍していた洋画家
※2 ラ・パンセ:平和大通りある柳原義達の作品「瞑想」(1953年)。広島では戦後初の野外彫刻。
コレクション展2024-Ⅰ ハイライト+ リレーションズはこちら
DVD価格:3,080円(税込)
発売・販売元:松竹
©1933 松竹株式会社/©1934 松竹株式会社
※令和6年4月時点の情報です。
日本を代表する映画監督、小津安二郎(1903-1963)。尾道市を舞台にした『東京物語』(1953年)は監督の後期作品として高く評価されていますが、初期の作品は紛失も多く、音声がついていないサイレント映画が主流となっています。
私がお勧めする『出来ごころ』(1933年)は、小津監督が高く評価されるようになった初期の作品。小津監督のペンネームであるジェームス・槇が原作のサイレント映画です。
小津映画の初期作品になくてはならない人物、坂本武が演じる喜八が主人公の人情物語シリーズの第一作。のちの『男はつらいよ』シリーズの原点とも言われる喜八のキャラクターをもって、人の心の揺れや次々と連鎖的に起こる出来事を丁寧に描いています。財布をめぐる人々の出来ごころ、ひそかに女性に抱いた出来ごころ…サイレントだからこそ、より役者の表情やしぐさの豊かさ、昔の古き良き日本の生活や思いにふれることができる名作です。
吉田 洋さん |
身近な広島の海の生き物について、水産振興センターの吉田さんに教えていただきます。 |
春から初夏に旬を迎える“アサリ”
GW 間近のこの時期、おすすめの美味しい海の幸といえば「アサリ」です。全国各地で愛され、食用とされてきた貝。広島では「こがい(小貝)」と呼ばれ親しまれてきました。比治山(南区)にある縄文時代の貝塚からは多くのアサリの貝殻が発見されており、古くから人々がアサリを食べていたことが分かります。
アサリといえば潮干狩り! 潮が引いた干潟を熊手で掘り、アサリに触れた瞬間の「カツン!」という音に喜びを感じた、そんな経験を持つ人も多いのではないでしょうか。しかしここ十数年、アサリは全国的に漁獲量が激減しています。広島県でも平成元年(1989 年)の漁獲は約1,900tでしたが、令和2年(2020年)は約51tと1/37にまで減少しました。減少の理由としては、地球温暖化や埋め立てによる干潟の減少など環境の変化とともに、南方系のエイやクロダイなどの魚類による食害も要因の一つと言われています。
現在、水産振興センターでは、漁業者の皆さんと一緒に広島湾のアサリの漁獲量を復活させ、食卓に提供を目指す取組みを行っています。
まず、春に昨年の秋に生まれたアサリの稚貝が、広い干潟のどの辺りに多く生息しているかを調べます。生まれたばかりのアサリの幼生(赤ちゃん)は、2週間以上波間を漂い、干潟にたどり着き、稚貝となります。そのため稚貝の生息場所は毎年変わります。広い干潟で小さな稚貝を見つけ出す作業は大変ですが、アサリの成長と漁獲量を左右するとても大切なデータです。春の調査結果をもとに、漁業者の皆さんは魚類による食害防止の網を設置し、漁場の管理を行い、大きく育つようアサリを守ります。この取組みのおかげで、近年アサリ漁業の復活が見えてきました。
天然の稚貝から大事に育てた地物のアサリは身が太り、グリコーゲンなどの旨味成分がたっぷりです。地物アサリが、皆さんの食卓に上がる日を目指して、今日も漁業者の皆さんと取組みを進めています。
広島湾で獲れる代表的な魚介類7種(メバル、コイワシ、オニオコゼ、アサリ、クロダイ、カキ、アナゴ)をまとめて「広島湾七大海の幸」と称し、広島湾周辺市町、市場関係者、漁協が協働し、豊かな里海で育った魅力ある食材として多くの人々にPRすることで、その消費拡大を目指しています。
※「見てみよう! 広島の海」は3ヶ月毎に掲載します。
2008年の発足当時、広島でプロの落語家の噺を聴く機会が限られていたため、地元でもっと幅広く旬の落語家の噺をライブで聴いて欲しいと活動をスタート。以来、年に4〜5回のペースで話芸の会を開催してきました。代表の上村里花さんが実際に見て、聴いて「いい!」と思った芸人を呼ぶのがポリシーで、東京の寄席やホールに通い旬の芸人を選び企画を立てています。なんと柳家喬太郎、春風亭一之輔、神田伯山(当時は松之丞)も、広島で初めて会を開催したのは同会だそう。会場も収容人数約200人にこだわり、マイク無しの生声が届く広さと決めています。現在の活動メンバーは約10人。落語が好きなスタッフを募集中です。
会の打ち上げにて。前列左端から上村さん、三味線の玉川みね子師匠、落語家の三遊亭白鳥師匠。後列左から3人目が浪曲師の玉川太福先生とスタッフの面々。
5 月26 日(日)14:00~
JMSアステールプラザ大広間
6 月9 日(日)14:00~
広島工業大学広島校舎
★7/21「春風亭柳枝独演会」、8/21「落語教員委員会、再び」の公演も決定。詳細は随時、SNS、ホームページで最新情報を更新。
暖冬だった2月と3月が終わりました。春の暖かさを感じ、桜が開花しました。スーパーで弁当を買って手さげバッグに入れて、せせらぎ公園に花見へ行く人を見かけます。コロナがひと段落したので、花見客の数が多いです。
(安佐南区 ヨーグルト大好きさん)
☆ 開花時期が3月末で暖かく、雨の日も多かったため晴れた日には一気に花見客で溢れていましたね。公園での花見はお子様連れも多そう。賑やかな春のスタートに胸がおどりますね。(編)
毎月、「to you」を楽しみにしています。小さいギャラリーのスケジュールも時間があれば、気軽に足を運べるのでとてもありがたく感謝しています。田中聡さんの作品展もとても楽しみです(展示は4/28 まで)。楓ちゃんシリーズの大ファンです。いつも癒されています。「to you」の表紙も田中さんの絵と知った時びっくりでした。これからも「to you」を楽しみにしています。内容の濃い情報誌、他にないと思います。感謝!
(佐伯区 高市素子さん)
☆ ご愛読・ご活用いただきありがとうございます。ギャラリーは展示作品の作家さんがいらっしゃる時に行くとお話を聞くことができて作品がより身近に感じられますよね。来月も田中聡さんの表紙イラストをお楽しみに♪(編)
to you 4月号のみんなの広場で「このえび、とーまれ!」の広電の車両の紹介記事があり、先日乗ったばかりでビックリしました。かっぱえびせんは長く食べていなかったので早速買って帰って食しました。元気いっぱいの子どもの頃、懐かしく思い出しました♪
(廿日市市 あざみさん)
☆ あの独特のえびの風味は記憶に染みついていますよね。ラッピング車両を見て広島発祥ということを初めて知ったり、またふと思い出したりする人も。あの味を思い出すとスーパーに走りたくなります。(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶広島映画サークル協議会第441回例会「ふたりのマエストロ」鑑賞券(3組6名様)
❷「第45回広島市新人演奏会」鑑賞券(5組10名様)
❸「音楽の花束<春>~広響名曲コンサート」鑑賞券(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/令和6年(2024)年5月10日(金)※当日消印有効
高木 由香里
朝が私に語りかける。
「何も持っていなくて不安だわ。」
私は朝に語りかける。
「朝は何も持っていないから良いのです。」
朝は、一瞬遠くを見た。
不思議そうな朝にこう続ける。
「みんなあなたを待っている。手ぶらで旅に出られるほど、ワクワクすることはないわ。」
朝は照れくさそうに笑う。
私は、ゆっくりとペダルを漕ぎ始める。
今日をはじめることにした。
(第33号一般の部・詩部門)
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246