「to you」2023年9月号
令和5(2023)年8月25日(金)発行
令和5(2023)年8月25日(金)発行
竹本 錣太夫さん(たけもと・しころだゆう)
文楽太夫
広島県出身。1969年四代竹本津太夫に入門 竹本津駒太夫と名のる。1970年10月朝日座で初舞台。1989年1月五代豊竹呂太夫の門下となる。2021年1月大阪・国立文楽劇場において、六代目竹本錣太夫を襲名、「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)~土佐将監閑居の段(とさのしょうげんかんきょのだん)」で披露。2020年4月切語りに昇格。
2020年3月第39回(令和元年度)国立劇場文楽賞文楽優秀賞ほか受賞多数。2021年12月第56回大阪市市民表彰「文化功労部門」受賞。
10月4日(水)に上演の『桂川連理柵』の「帯屋の段」で切語り(※)を務める竹本錣太夫さん。公演を前に、文楽の楽しみ方、舞台への思いを伺いました。
※切語り:重要な場を語る太夫に与えられる最高の資格
「人形浄瑠璃文楽」の舞台は、江戸時代に創作されたお芝居の形を崩さず、台本も含め当時とほぼ同じ形で上演しています。一人のナレーター(太夫という義太夫語り)が、一人の三味線弾きさんと共同で、お芝居の全てを声と三味線の音だけで表現します。
当世風に例えるなら、オペラやミュージカルで登場人物の台詞や歌、心の動き、物の動きを二人で演じ切ります。しかも舞台脇の畳一畳ほどの空間(床)に座ったままで。床の二人が作り出す世界に呼応して、役者として登場するのは物言わぬ人形達です。人形一体を「人形遣い」が三人掛りで動かすので、登場人物(人形)の数×3の人形遣い達が狭い舞台にひしめきます。これが何百年もかけて日本人が作り込んだ文楽独特のお芝居の形です。初めてご覧になる方には不思議な世界に見えるかもしれません。まずこの「形」に慣れていただき、心を柔らかく開いて観てください。太夫の発する言葉、声の響き。三味線という楽器の音の響きと日本の音楽特有の音感や旋律。人形の動きの極端にデフォルメされた「形」。人形の衣装の美しさ、登場人物の言葉の一片。何でもいいのです。文楽の舞台が、皆さまの心の中に必ず有るはずの「何かに共鳴する内なる自分」を見出すきっかけになれば良いな! と思っています。
私は20歳で文楽の世界に入り、50年以上経ちました。今日の舞台、明日の舞台が常に今までで一番充実した舞台でありたいと思っております。お客様の反応が良い時は嬉しいですね。お芝居をご覧になっているお客様がそっと涙を拭われるような場面は、何だか自分が報われたような嬉しい気分になります。人形遣いさんや三味線弾きさん皆、同じだと思いますが、上演中のお客様の拍手は嬉しいです。もしも面白かったと思われた時や良かったと思われた時は、ご遠慮なく盛大な拍手をお願いいたします。私たちにとりましては大きな励みとなります。文楽は実に楽しい芝居です。ぜひこの楽しい時間を共有いたしましょう!
「文楽協会創立60周年記念 2023年度10月地方公演 人形浄瑠璃 文楽」はこちら
著:照ノ富士春雄
発行:日本写真企画
1,650円(税込)
単行本発売中
祖父の影響で、子どもの頃から大相撲が好きでよくテレビで観ていました。その頃の横綱といえば貴乃花関。勝っても負けても淡々としている姿は子どもながらに「横綱の品格」を感じました。
この本は、僕と同い年でずっと応援している横綱・照ノ富士関によって書かれたもの。彼は2015年に豪快さと気持ちを全面に出す相撲で大関まで駆け上がり「次の横綱」と言われていたものの、そこから怪我と病気で序二段まで番付を下げてしまいます。そこから復活し、2021年に横綱に昇進したわけですが、そこに至らしめたものは肉体的な回復・成長はもちろん、精神的な成長・考え方の変化が大きかったことをこの本で知りました。
奈落の底から生まれた「周りへの感謝」「すべて自己責任」の精神。逆境を乗り越え、淡々と我が相撲道を歩む姿はまさに「品格ある横綱」。書道家として、そして人として、これから生きていく上で大切にしたいことをこの本から学びました。
今回もぐりんが行くのは南区の広島駅・比治山周辺です。この地域には、どのような文化財があるのでしょうか。
親柱のブロンズ製の鷹をはじめ豪華な装飾で注目される猿猴橋は、もともと木橋でした。広島城下に架かる数少ない橋の一つとして、また東の玄関口として重要な役割を担っていました。この橋を渡って多くの人々が城下を抜けて京都や九州へ往来していました。歴史学者で漢詩人の頼山陽もその一人です。彼は若い時に脱藩を図り一時幽閉されたのですが、のちに赦されて京都へ移り活動していました。橋の北詰には、彼が帰省の際に詠んだ漢詩「郷に到る」の説明板があります。そこには、この猿猴橋が見えると故郷に戻ったという気持ちになり、早く母梅颸(ばいし)に会いたいという思いの詩が紹介されています。
猿猴橋を市街地に向かって渡り、南方向に進むと比治山の麓、多聞院があります。その境内の一画が頼家の墓所となっています。
江戸時代中・後期、広島藩の学問所の教授として登用され、学者として頭角を現した頼春水をはじめ、その弟で郡代官や三次町奉行として活躍した杏坪、学者で能書家でもあった山陽の長男聿庵たちがひっそりと眠っています。彼らの墓は私たちがよく目にする仏式のものではなく、儒教の様式によった特徴的な墓石となっています。ここは昭和15(1940)年に県の史跡に指定されています。
※次回(12月号)の文化財めぐりは「安芸区」です。
平和への思いを発信したいと2019年に4人で結成した音楽と朗読のグループ。自主公演のほか、依頼を受け児童館で子どもたちに平和の大切さを伝える公演をしてきました。来年の夏には公民館で一般向けの公演を予定。毎回、対象年齢や客層を考慮した表現を心掛けながら、方向性がズレないように舞台を作り上げます。コンサートとしても楽しめることを大切に、思いが伝わるよう工夫を凝らしているそうです。
アルフレド・ジャーさんの記事が良かった。作品を誕生させるまでの方法、好奇心が何よりも大切だということ。作品を観て、アルフレド・ジャーさんの答えを受け取れるか? コミュニケーションが成立するか?自分を試したい。(中区 市川敦子さん)
☆アルフレド・ジャー氏が伝えたいこと、それを受け止めたらヒロシマについてより深く考えさせられるかもしれませんね。受け止めた時の感想をお聞きしてみたいです。(編)
「to you」8月号掲載の「季節の花散歩」。日本一のバオバブと熱帯の植物はすてき! 私はマダガスカルへバードウォッチングツアーで行った事があり、その時に現地で見ました。かの地で掘り起こしたバオバブを日本の広島の植物公園へ運搬して、植え付け、昨年まで世話をした担当者の話を、中央図書館で聴講しました。(安芸郡海田町 松﨑成子さん)
☆バオバブは「星の王子さま」にも登場しお話の世界のもののように感じますが、本物を見た時やオーストラリアから運ばれ植え付けをした時の苦労を聞くと非常に重みを感じられそうですね。夏に咲く花も見どころですね。(編)
これまで何気なく見過ごしてきた「to you」。初めて中身をじっくりと拝読して驚きました。あまり知られていない演奏会や展示会等の情報が細かく網羅されており、情報収集力もさることながら、膨大な情報をコンパクトに分かりやすくまとめられた紙面に感銘を受けました。還暦を過ぎた今、これからの人生の趣味・特技を見つける道標として、毎月熟読していきたいと思います。(安佐南区 夢の旅人さん)
☆ありがとうございます。若い頃には興味がなかったものが、年齢を重ねると面白く思えてくることがありますが、「to you」には新たな好奇心の扉を開くイベントなどがたくさん詰まっています。これからもご愛読ください♪(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶人形浄瑠璃 文楽(2組4名様)※希望の部を明記
❷ミュシャ展(5組10名様)
❸HIROSHIMA HAPPY NEW EAR 31(広島の新しい耳)藤村実穂子リサイタル(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/令和5年(2023)年9月10日(日)必着 ※当日消印有効
吊り革に 関節あずけ揺れている 夕映え電車の マリオネットは
長門 輝子(第32号一般の部・短歌部門)
ばあちゃんの やっぱりおいしい くりきんとん
さこ田 あゆ(第32号ジュニアの部・小学生低学年・俳句部門)
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246