「to you」2023年7月号
令和5(2023)年6月25日(日)発行
令和5(2023)年6月25日(日)発行
小島 燎さん(こじま・りょう)
ヴァイオリニスト
フランスと日本の二拠点で活動するヴァイオリニスト。パリ在住。広島出身。5歳より父・小島秀夫の手ほどきによりヴァイオリンを始める。全日本学生音楽コンクール第1位、広島県教育委員会より『メイプル賞』、広島市長より『フェニックス賞』 、ABC新人コンサート音楽賞、青山音楽賞バロックザール賞など、受賞多数。これまでに長原幸太、小栗まち絵、レジス・パスキエ、堀米ゆず子の各氏に師事。修道高校および京都大学総合人間学部を経て、2015年に文化庁新進芸術家海外研修制度研修員として渡仏、パリ・エコールノルマル音楽院・パリ国立高等音楽院を卒業。現在、ソロ・室内楽を中心に、国立オーヴェルニュ管弦楽団をはじめとする各地のオーケストラの客演コンサートマスターも務めるなど、活発な演奏活動を行うかたわら、一般社団法人コジマ・ムジカ・コレギア理事長として「しまなみ海道・秋の音楽休暇村」総合プロデューサー、室内楽セミナー「しまなみ音楽祭/5月の尾道音楽学校」代表・音楽監督を務める。
父・小島秀夫氏(元広島交響楽団コンサートマスター)が広島で音楽家や愛好家の育成、活動の素地作りに尽力する姿を見て育った燎さん。フランスでの音楽活動と父の跡を継ぐ広島での育成活動の先にある、ご自身が目指す境地について伺いました。
私自身、父が創設したコジマ・ムジカ・コレギア、広島ジュニアオーケストラ、HIROSHIMA MUSIC FESTIVAL(※)などの活動の中で育ちました。私にとってオーケストラの練習場は自分の家、一緒に弾く仲間やその保護者は家族のようだと感じていました。一人っ子だった私は、仲間と一緒に一つのステージに向けて協力することが楽しく、それで音楽を続けてきたといっても過言ではありません。個人技術の鍛錬に終始するのではなく、音楽が人と人を繋ぎ、どんどん大きな輪になっていく。むしろ音楽はそのためにある。幼い頃にそのようなことを肌で実感できたのは、幸運でした。
(※)現・しまなみ音楽祭/ 5月の尾道音楽学校
広響を退任後、若い音楽家のために残りの人生を捧げる父の姿を見て、音楽家はただ演奏するだけではなく、次世代を育成し、地域の文化振興に尽くすものだとおのずと思うようになりました。ですから、20代の頃から自分の研鑽と並行して、父の活動を引き継ぐようになったのは、自然な成り行きだったと思います。
日本では競争に勝たないと生き残れないという空気を感じることがありますが、音楽は本来、音を楽しむためのもの。「競争より協調」とは父が常に言っていた言葉で、私としてはその根本を伝え続けたい。楽しむために努力をする、そういう風に子どもたちが感じられる場を守っていきたいです。
フランスでの演奏活動は、自分のヴァイオリニストとしてのキャパシティーを高めますが、それはすなわち、次世代に伝えることの引き出しを増やすことにもなります。ですから、パリと広島の両輪で活動することは私にとって必然かつ不可欠なことで、築いたキャリアや人間関係がいつの日か広島で大きく花開くといいなと思い、日々努力を続けています。
作・絵:原田泰治
定価:1,320円(税込)
出版社:ポプラ社
発売中
数年前に本屋さんでこの絵本に出会いました。手にとった理由は、表紙に木琴が描かれていたから。画家の原田泰治さんが、自身の幼少体験を描いた話だということは、購入後に知りました。
戦争を機に一家で田舎に移り住み、開墾から始める物語です。水を得るため父はトンネルを掘りますが、なかなか進めません。疲れ果てた父のため、泰治少年は木琴で「こぎつねこんこん」を演奏します。息子の木琴に励まされ、元気を取り戻す父。私は自分が初めて木琴に触れた日の感動を思い出しました。
現在私はマリンバ教室を主宰していますが、私の時代はマリンバではなく、幼稚園で触れた木琴が原体験。以来この楽器が大好きになり、ずっと夢を追っています。
泰治さんの時代には戦争があり、それは大変だったと思います。それでも息子の木琴で家族は明るくなるのです。大変な境遇でも、辛い時でも、音楽は人を幸せにできるということを、この絵本から改めて感じます。
「虫さがし『初夏の昆虫』」
文・写真: to you市民パブリシスト 檜垣全次郎
5月最終の日曜日。広島市森林公園こんちゅう館で「虫さがし『初夏の昆虫』」のイベントが行われました。集まった参加者は事前に申し込まれた子どもたちと保護者の方々。集合場所の部屋では開始を待つ間に本棚に置いてある昆虫関連の図鑑や絵本を黙々と読みふけっている子どもたちの姿が並んでいました。
虫探しの開始前、注意事項や安全に関する説明が終わると初夏の園内へ出発です。普段は開放されていない施設や林の中、観察池を巡ります。大きな虫取り網をひらひらさせた職員の松尾さんは先頭を進む案内人、みんなを見守るしんがりは久我さんです。
園内の虫探し、外に一歩足を踏み出したところですぐに松尾さんの解説が始まりました。「これはテングチョウです。羽化したばかりですね」。子どもたちの背後からのぞき込むと夏を感じて蛹(さなぎ)から出たばかりのチョウがじっとしていました。次は金ぴかの虫を発見。「オオセンチコガネです。動物のフンを食べる虫なので触った人は後でしっかり手を洗ってくださいね」。林の中に入って地面を動く虫たちの発見は子どもたちが主役です。素早く見つけてさっと採ります。子どもたちは平気でも大人たちからは「もっといいもの捕まえて」と注文が聞こえてきました。虫をみつけて名前を知る。見つかる場所を知る。見つかる時期を知る。
自然の精妙さに対する驚きや感性を素直に表現する子どもたちと、目線を落として一緒に自然に触れる保護者の方々。
施設の飼育室で展示されている虫たちも魅力的に活動しています。屋外の身近な環境に潜む虫たちを知っていく事も楽しく貴重な体験に見えました。こんちゅう館では年間をとおして色々なイベントが予定されています。自分は昆虫嫌いだと決めつけている方も、自分にあったイベントをみつけて参加されると自分の中に眠っていた意外な感性が目覚めてくるかもしれません。
※「to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3 ヵ月毎に掲載します。
1955年に広島電報局の有志 10数名が同好会としてスタートした後、名称を変えつつ活動を続け、現在は会社の枠を超えた 20歳〜60歳の約 40名が所属。年2回の定期演奏会のほか、全日本吹奏楽コンクールに参加し、毎年優秀な成績を収めています。また、学校やイベント演奏など地域貢献も大切にしており、演奏技術の錬磨とともに音楽を介した部員相互の融和、人間的な成長を目指しています。
はつかいち美術ギャラリーに行きました。「うるおうアジア」展で、福岡アジア美術館蔵の作品展です。普段目にしない、インド、ベトナム、中国などの絵画が中心です。それぞれの国の特徴もあり、いつもとは違った毛色の作品を面白く鑑賞し、本家の福岡アジア美術館にも行きたくなりました。今流行りのグローバルサウスではないですが、中南米やアフリカなどマイナーな国の美術や映画、音楽等も広く体験する機会があればよいです。(西区 平井忠博さん)
☆独特の色使いや世界観を持った作品から、アジアの国々を旅しているかのようなエネルギーを感じ取れますよね。広島で普段あまり見ることができない国々のアートがもっと楽しめるようになるといいですね。(編)
広島県立美術館県民ギャラリーの巡回新協展に行ってきました。石崎将浩さんの「廃墟と戦禍の狭間で」が印象的でした。崩れ落ちたウクライナの建物の前で人形を抱きしめる少女を描いた作品でした。広島には外国人観光客も増え賑わいが戻ってきていますが、世界の現実を考えると胸が痛みます。(呉市 YUKOさん)
☆大きなキャンパスいっぱいに描かれた少女とその背後にある戦争の惨状、この作品はロシアの侵攻が始まりしばらくした頃に描かれたそうです。今もこの状況に苦しんでおられると思うと胸が張り裂けそうですね。早く平和になることを願うばかりです。(編)
旧広島市民球場跡地にオープンした、ひろしまゲートパークプラザに出かけた。昼食を食べているとイベント広場からにぎやかな女性の声がする。覗いてみると舞台には、ピンクのTシャツにフリフリのミニスカート、頭にはピンクのリボンを付けた中年男性の姿があった。奇抜な衣装や声のギャップに度肝を抜かれたが、体を張って披露された大道芸は見応えも笑いも十分。知らない人同士が輪になって座り、笑い合える日常が戻ったことに感謝。(佐伯区 sinceさん)
☆新しくできたこの場所、週末にはイベントが行われ、平日は気軽に入れる飲食店などが並んでおり人が集まりそうですね。ここで行われるイベントも「to you」で積極的に発信していきますのでお楽しみに!(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶堀内誠一 絵の世界(5組10名様)
❷演劇企画室ベクトル第25回本公演「ら抜きの殺意」(7/29(土)14:00の回、7/30(日)10:00の回/2組4名様/希望日を明記)
❸ひろしまオペラルネッサンス「フィガロの結婚」(2組4名様/希望日を明記)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/令和5年(2023)年7月10日(月)必着 ※当日消印有効
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246