「to you」2026年4月号
令和8(2026)年3月25日(水)発行
令和8(2026)年3月25日(水)発行
若林麗
コンサートの様子
「鹿角ストラップ」
アルベール・マルケ《ル・ピラ》1935年 油彩/カンヴァス ボルドー美術館 ©Mairie de Bordeaux, musée des Beaux-Arts, photo, F.Deval.
令和7年度の子ども読書まつりのイベントの様子
『グレース~平和への祈り』©︎Rebecca McMillan
「めぐる」©合同会社CHAMP ASIA

イラスト/田中聡
鳥飼 りょうさん(とりかい・りょう)
楽士・無声映画振興会代表
無声(サイレント)映画の楽士。ピアノ、打楽器を演奏。全ジャンルの映画に即興で伴奏をつけ、これまでに伴奏した作品数は850以上。国内外の映画祭や劇場等での生演奏付き上映に多数出演している。2018年、神戸発掘映画祭で行われたフィルムアルヒーフ・オーストリアの修復による『オーラックの手』デジタル復元最新版のワールド・プレミア上映で伴奏を担当。2021年、ピアノを常設する映画館を巡る全国ツアー「ピアノ×キネマ」を開催。同年、国立映画アーカイブの「サイレントシネマ・デイズ」に初出演。現在、最も上映会で演奏する楽士のうちの一人として関西を中心に活動している。無声映画振興会代表。ホームページで上映イベント、映画館の上映情報を随時発信中。
無声映画振興会ホームページ X Instagram Facebook
『裁かるゝジャンヌ』(1928年/カール・テオドア・ドライヤー監督)に衝撃を受け、いつしか無声映画を広める使命感が芽生え、気づけば楽士になっていたという鳥飼りょうさん。広島での上映会を前に楽士としての思い、作品の魅力を伺いました。
■無声映画の楽士の役割
基本的に映画の最初から最後まで、ずっと弾いています。音楽で映画を観やすくするのが楽士で、音楽で感情の増幅ができるようにと思いながら演奏しています。伝わりにくいシーンを少しだけ音で先導をしたり、お客様が映画に集中できる環境を作る仕事なのだと思います。俳優の感情に寄り添った音がつけられた時や、お客様から「会場で演奏されていることを忘れて映画に集中できた」とおっしゃっていただけた時などは、一番うれしい瞬間です。
■広島での上映作品
『日本南極探檢』(1930年)は映画の歴史的にもかなり前期の作品で、テクノロジーが発達していない中で南極に行く大変さが本当によく伝わります。先人たちの苦労もありつつ、その中で楽しんでいる感じもあって、非常に興味深く観られると思います。歴史上の人物の大隈重信が知り合いと談笑している姿など、こういう記録映像ならではの味わいだと感じます。
もう一つの『男一匹の意地』(1921年)は、東洋人の俳優としてハリウッドで大成功を収めた早川雪洲の若かりし頃の作品です。現代のイケメンとはタイプが違いますが、どこか儚げで危ない雰囲気の色気があって、引き込まれます。
■無声映画の魅力
トーキーが登場する直前の1920年~1927年は無声映画が成熟を迎えた時期で、特にこの頃の作品は映像だけで語る技術が卓越しています。役者は言葉を発せずともちゃんと心情を伝える演技をしていて、ちょっとした顔の表情の動かし方で伝えるシーンなど絶品です。当時、フィルムはとても高価だったので、一コマ一コマが考えに考えて撮った結晶で、偶然の産物はありません。昔の映画なのに面白いというより、むしろ今の映画にはない面白さがあると思っています。そして楽士の立場で言うなら、毎回即興演奏なので、同じ作品でも会場、観客が変われば伴奏も変わります。100年後の楽士は、現代とはきっと違う音楽をつけるでしょう。ぜひ今回の上演をきっかけに、無声映画に親しみを感じてもらい、各地のイベント上映や常設の映画館などに出かけて、たくさん作品を観ていただきたいです。
現存する日本最古の南極記録映画『日本南極探檢』ピアノ伴奏付き上映&講演はこちら
「サウンド・アンド・サイレント早川雪洲生誕140年記念『男一匹の意地』 ピアノ伴奏付き上映はこちら
佐藤いよりさんおすすめの一冊『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(幻冬舎文庫)
著:篠田 桃紅
出版社:幻冬舎
¥594(税込)
発売中
好きな事に夢中になる時間があれば人生は楽しくなる
「70歳」の声を聞いて心身ともに老いを感じ始めた私ですけれど、晩年の今こそ感性豊かに明るく過ごしたいものだとも思っています。二年前がんに罹患した時、この本の中の篠田桃紅氏の言葉に助けられました。中でも特に好きな言葉は「夢中になれるものがあれば、人は生きていて救われる」です。
術後すぐ復帰し、月一回の弾き語りで毎回新曲の演奏を自分に課してきました。レッスンで生徒さんたちを叱咤激励、門下生とボランティア演奏に出向きJazz の楽しさをお届けするなど、夢中で多忙な日常を送り、おかげで病気への不安に苛まれることなく元気に暮らすことができました。母(98歳)は音読を学んでおり、発表会を控え前向きな様子。母もまたこの本に刺激を受けたひとりで、母と私にとって大切な宝物となっています。老いても創造的な生活をと願う同世代にも、いずれ老いを迎える若い人たちにも、美術家が生み出した胸に刺さる言葉に触れる機会を持っていただければ幸いです。
ピアノによる弾き語りで活動している。
27年間【Shara Jazz Vocal Studio】を主宰。
門下生たちと共に、ボランティア演奏もしている。4/19(日) にJazzコンサートを開催。
詳細はこちら
ミナモアを歩く
『広島の新しい玄関口』
文・写真:to you 市民パブリシスト 梶川 芳文
広島の魅力的な建物を見て、触れて、知ることのできるイベント「ひろしまたてものがたりフェスタ」(※)に参加した。この度は、昨年オープンした話題の駅ビル「ミナモア」だ。「ミナモアの開業効果で広島駅周辺の買い物客の支持率は急上昇」(中国新聞広域商圏調査)どおり、今日も変わらず賑わっている。「路面電車がミナモアに乗り入れて交通の便が良い」「初出店の店が多く品ぞろえが豊富」などの利用客が支持する以外の魅力を期待して、本日のガイドJR西日本の田原さんにお勧めスポットを屋上から案内してもらった。
4120平方メートルの屋上は「ソラモア広場」と名付けられ、植栽が成長するまでの現況は一見して「原っぱ」であるが、この自由度のある「原っぱ」にはさまざまな利用の可能性を感じる。木製の台座に腰かけて開放的な気分に浸れる都会の「穴場」のような気がした。屋上から7F「ウッドデッキ広場」に降りる大階段からの眺望も見所だろう。南側は駅前通りを一望でき、北側は二葉の里の変貌する姿が一望できる。ウッドデッキから室内に入る大階段付近の通路の壁面に、駅ビル新築工事に携わった7683名の名前を刻んだプレートが張り付けてある。気付かず通り過ぎてしまうこの壁の銘鈑は、これから続くミナモアの歴史の原点として立ち止まって見てほしいところだ。
3F連絡通路からは、路面電車が広島駅へ乗り入れる2Fを見渡せる。写真映えするミナモアの象徴的な場所だ。両脇には「雁木テラス」があり、天井にはミナモアの語源でもある水面の輝きがデザインされている。2F東西ペデストリアンデッキ東側の路面に、赤色のラインが表示されているのにも注目してほしい。そのラインの先はマツダスタジアムだ。
ミナモアは広島駅の四代目。三代目は62年前(1963年)開業の「広島駅ビル」で、展望浴場まである最先端の複合施設だった。ミナモアを歩きながら旧駅ビルを回想する参加者もいた。広島駅南口エリアは2029年春に全体完成の予定。広島の玄関口の顔づくりは完成する。
※「ひろしまたてものがたりフェスタ」は毎年11月に開催される。
「to you 市民パブリシストによるバックステージレポート」は3ヵ月ごとに掲載します。
ヴォーカルアンサンブル凜=合唱=
女声合唱曲を歌いたい仲間が集まりグループを結成し、2017年から合唱団として活動。福原泰弘氏の指導のもと、20代から60代の23人が心地よいアンサンブルを目指して練習に励んでいます。大切にしているのは、お互いに聴き合い、響き合うこと。年に1回の定期演奏会のほか「春の♪街角コーラスふぇすた」、「広島県合唱フェスティバル」に参加し、昨年は「おかあさんコーラス全国大会」に出場しました。

練習は主に二葉公民館、東区民文化センターにて、月に3~4回。土曜18時~21時。事前の連絡で見学が可能です。
問/田畑 TEL.080-4726-3078
◆ヴォーカルアンサンブル凛 8th Concert

春の陽気に包まれるような温かなコンサート。凜とした無伴奏の透明感と力強さで人間の「生への肯定」を歌う「yes」(作曲:信長貴富)、各声部とピアノが絡み合う美しく叙情的な旋律の「太陽と海と季節が」(作曲:森山至貴)など、曲調の対比も聴きどころです。
時/4月25日(土)16:00~
会/コジマホールディングス西区民文化センター ホール
料/800円
((公財)広島市文化財団文化活動助成事業)
詳しくはこちら
●日本伝統工芸展
日本伝統工芸展へ行ってきました。素晴らしい作品ばかりで引き込まれます。作品を一つ完成させるまでに、どのような技術を使いどんな思いを込めて製作するのかと思うと、見ているこちらまで緊張します。若手の方から人間国宝の方の作品まで展示してあり、技術の違いは分かりませんでしたが全ての作品から何とも言えないパワーを感じることができました。(安佐南区 ニムさん)
☆ 内側部分まで丹精込めて作り上げられている器や、布を透かしたりなどこの素材をどうやったらこの表現にできるんだろうと思うものなど、驚かされますよね。本格的なのは難しくても、作品づくりの体験をしてみたいものです。(編)
●隠れた歴史スポット
「to you」3月号の記事「もぐりんと歴史探検No.8」を読んで、國前寺というお寺を初めて知りました。広島駅のすぐ近くにこんなに古い建物が残っているとはびっくりです。春になったら散策に行ってみたいです。(安佐南区 いちごさん)
☆ 再開発が進む広島駅周辺ですが、原爆の被害を免れた歴史的な神社仏閣や建造物が点在しています。これらをボランティアガイドが案内する「いつでもガイド」(希望日の2週間前までに要予約)や「ふたばの日定期ガイド」(毎月28日開催・自由参加)が開催されていますので、参加してみてはいかがですか。(編)
●新しいイベントを知るきっかけに
広島のイベント各種を幅広く知ることができるので、毎号楽しみにしています。知ることで新しいきっかけになることもあります。冊子(紙)で全部を見るのが毎月のお決まりです。(西区 hanahou さん)
☆ ご愛読いただきうれしいです。5月号からページ数が8ページとなり、「ひろしまカレンダー」はホームぺージ「カルチャーひろしま」内のtoyouページに移行します。心苦しいのですが、その分凝縮した誌面+ホームページで充実した内容をお届けしたいと思っています。(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶映像文化ライブラリー 映画鑑賞会ご入場引換券(3組6名様/R9.3月末まで有効)
❷アルベール・マルケ展(5組10名様)
❸下野竜也による楽曲分析コンサート(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆応募締切/4月10日(金)当日消印有効

語り部は 若草に座し公園に 降り来る春陽の 輝きを言ふ
大多和 義(第33号一般の部・短歌部門)
桜の木 散りゆくさまは 夢のよう
栢本 陽樹(第33号ジュニアの部・中学生・俳句部門)
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246