「to you」2023年4月号
令和5(2023)年3月25日(土)発行
令和5(2023)年3月25日(土)発行
東 直子さん(ひがし・なおこ)
歌人・作家
旧安佐郡安佐町(現・広島市安佐北区)生まれ。
1996年短歌連作「草かんむりの訪問者」で第 7回歌壇賞を受賞。 2016年に小説『いとの森の家』で第 31回坪田譲治文学賞を受賞。 2020年 8月より中国新聞「中国歌壇」選者。 2009年 1月より中国新聞にフォトエッセイ「言丿葉丿箱」を連載中。 歌集に『春原さんのリコーダー』など。
広島市出身の歌人であり、人気作家の東直子さん。 講演会を前に、故郷や文学についての思いを伺いました。
海があって、広い川があって、街中では路面電車が走っている、のびやかで懐かしさのある景色は心が落ち着きます。 一方、味わいと熱さを感じさせる広島弁の会話は情感たっぷりで心をかきたてられます。 原爆という大きな痛みから再生した街としてのいたわりとやさしさが、根底に流れていると感じます。
そして、平清盛がグローバルな夢の拠り所にした歴史性にも心惹かれるものがあります。
さらに、牡蠣やお好み焼きといった美味しい食べ物の数々もたいへん魅力的です。
最初は、紙に鉛筆を走らせて創作していたのですが、1990年ごろからワープロを、1995年ごろからパソコンを使って創作するようになりました。 特に小説など長いものを書くときはパソコンが必須ですね。
メモを取るのは今でも紙が多いですが、スマートフォンを常用するようになった7年ぐらい前からは、スマートフォンのメモ機能も併用しています。
読書は今でももっぱら紙の本です。 子どものときから親しんできた紙の本に愛着があります。
工夫をこらしたデザインや手触りが心地よく、目にもやさしく、気まぐれにページをめくるときの実感は、かけがいのないものだと思います。
一方、電子書籍は主に資料検索などに使います。 場所を取らずに大量の資料も持ち運べるのはとても助かります。
文学は、いつの時代でも、現実を客観化する役割があると思います。 過去の時代、現在、未来、それぞれの時間で起こったこと、あるいは起こりそうなことを考察することから、個人個人が今生きている意味も見出せるような気がします。
さらに、いつか消えてしまう命の営みの痕跡を、次の時代に残す役割もあると思います。 短歌は短い詩形なので、多くの人が作品を残せる可能性があります。 ともすると歴史の中ですっかり消えてしまうかもしれない人々の心の声を残せる文学の一つだと考えています。
今を生きる人の、あるいは生きてきた人の、たくさんの人の声に耳を傾けることが文学に関わる者としての使命の一つだと思っています。
ペトリ・クメラ
オープン価格 CD発売中
発売元:ワオンレコード
販売:株式会社キングインターナショナル
ペトリ・クメラ(1974 〜)は、フィンランドを代表するギタリスト。 多才かつ創造的な演奏活動で知られています。 『小生物音楽大全』はフィンランドで多くの賞を受賞しました。 このCDはクメラがコラボレーションをしてきた作曲家により提供された、小さな動物や昆虫を描いた作品35曲が収められています。 愉快、生真面目、超絶技巧、無秩序、瞑想的、驚かされるようなものまで、さまざまな性格の音楽スタイルで作曲された小品集です。 可愛い小生物のイラストが掲載されたオリジナルのブックレットが付属されているので、聴きながらイメージすることができます。 まるで絵本を読んでいるかのようなCDです。 2018年に来日の際、広島のコンサートでこの小品集が演奏されました。 ギターの特殊奏法を効果的に使用し、小生物を表現した演奏技術と豊かな音楽性に感銘を受けました。 私にとって生涯忘れられない公演となりました。
ギタリスト。 エリザベト音楽大学、広島文化学園大学(学芸学部)非常勤講師。 藤井音楽教室を主宰。
5月4日(木・祝)「壁のない無限教室コンサート in広島 Ver.2」(15:30 ~東区民文化センタースタジオ1)に出演。
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「装丁(そうてい)を楽しむ」
―デザインに惹かれて思わず本を手に取ったことはありませんか―
文・写真: to you市民パブリシスト 梶川芳文
広島市立中央図書館では年4回企画展が開催される。今回の企画展のテーマは「装丁を楽しむ」で、1月14日(土)から3月21日(火・祝)の期間で開催された。2月25日のギャラリートークには開始30分前から先着20名の整理券を求めて参加者の行列ができた。会場となる2階展示ホールは、中庭を背景にした明るい快適な空間だ。その中に整然と、テーマごとに配置された展示資料が参加者を迎えてくれた。
広辞苑によると装丁とは、書物を綴じて表紙をつけること。表紙・みかえし・扉など形式面の調和美をつくり上げる技術とある。
司書の浜田さんに先導されて、テーマごとに説明を受ける参加者は熱心に耳を傾けている。「変わる装丁」のテーマ展示では、文庫としては最も古い「新潮文庫」(大正3年創刊)と雑誌「暮らしの手帖」(昭和23年創刊)が時代の移り変わりがよくわかるように並べられている。私は昭和40年代の「暮らしの手帖」の装画(表紙画)に見覚えがあり、これを愛読していた亡き母の姿を想い出していた。この花森安治氏の装画には、その時代の記憶を脳裏に刻む力があるように思える。
「伝統的な装丁」のテーマの中に「袋とじ」があり、今も契約書などに多用されている。装丁の技法は日常の身近なところで役に立っているようだ。「変わり種!?な装丁」のテーマでは昭和49年創刊の広島の同人誌「凡无鴣(ぼんご)」が異彩を放っていた。手すきの和紙を表紙に張り合わせ1冊ずつ糸で綴じ込まれた装丁に、中には写真や絵が糊付けされた小冊子だ。参加者の男性は「趣味の俳句をまとめるのに参考になる」と感心されていた。
ギャラリートーク後半では「現代の装丁家たち」のテーマで、日本を代表するブックデザイナーの菊地信義氏らの手掛けた本が、作品として展示されていた。これらの作品を見ながら「本の見方が変わりますね。これからは本の装丁も含めて作品として楽しみたいと思います」(府中町から参加の男性)との感想があった。私も同感である。企画した図書館スタッフは、努力が報われ「我が意を得たり」であろうかと思う。次回の企画展を楽しみに待ちたい。
『現代の三味線』は、三味線で現代的な曲を弾いてみたい人達が、流派に関係なく週に1度集まり自主練習する会。イス、譜面台を使い、譜面は五線譜。メンバーは、学生時代のクラブ活動経験者、中高年で初めて三味線を手にした人、洋楽器と並行して楽しむ人など年齢・経験もさまざま。上達を目指したい人は「野澤徹也三味線合奏団広島支部」のメンバーとして、月に1度、野澤先生のレッスンを受けることが可能です。
「現代の三味線 野澤徹也三味線合奏団第9回広島定期演奏会」はこちら
県立美術館で開催の日本伝統工芸展へ出かけた。来館前にNHK日曜美術館「第69回日本伝統工芸展」の再放送を見て予習。番組では司会者が作家さんの工房を訪問し入賞作品を紹介していた。美術館で本物を見ると作家さんのお顔やアトリエ、使っておられた道具などが頭に浮かび一層興味を引いた。上から覗き込んだり下から見上げたり美しい作品を堪能できた。(佐伯区 sinceさん)
☆各地域の歴史・自然・文化が織り込まれ、長い時間をかけて繊細な手作業によって作られた個性豊かな伝統工芸作品。その背景を映像で事前に知ってから見るとより深く味わえていいですね。(編)
映画『スラムダンク』を観に行って、感動しました。アニメだから…と侮っていましたが、試合の描写も素晴らしいし、物語も良かったです。日本のアニメは世界に誇れると思います。(呉市 髙橋敏充さん)
☆フルCGを用いた臨場感たっぷりの動きが良かったですね。約20年前に放送されていたアニメが時代を超えて蘇り、懐かしさも感じました。韓国でも大人気らしく、本当に世界に誇れる作品ですね。(編)
「to you」は、広島の文化向上発展に大変役立っていると思います。芸術鑑賞が好きな私には、とても重要なマガジンです。もう、この3月で468号となるのですね。発行当時から、カバンに入れてチェックするのが楽しみです。写真や記事にも新しい発見があります。web版よりも私は、このマガジンが好きです。ページをめくりながら、明日の文化散歩をどうしようかと楽しんでいます。(中区 舟入のかっちゃんさん)
☆いつもご愛読いただきありがとうございます。ゆっくり見たり、お気に入りのイベントを見つけたりするには紙のマガジンが便利ですよね。この春も「to you」を片手に文化散歩を楽しんでください♪(編)
「Mail Box」に投稿してくださった方には抽選でプレゼントを進呈いたします。
❶映画『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』鑑賞券(3組6名様)
❷「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」鑑賞券(5組10名様)
❸「お気軽 昼コンサート ひのっ子名曲コンサート」鑑賞券(2組4名様)
投稿は、投稿フォーム、FAX、郵送で受け付けています。詳しくは「『Mail Box』への投稿はこちら」からご確認ください。
◆締切/❶令和5年(2023)年4月4日(火)必着 ❷❸令和5年(2023)年4月10日(月) ※当日消印有効
(公財)広島市文化財団 企画事業課「to you」係
TEL.082-244-0750 FAX.082-245-0246